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2007年09月23日
ブラックペアン1988
『ブラックペアン1988』(海堂尊 著)
『チーム・バチスタの栄光』を書いた海堂さんの最新作です。
土曜日、蒲田の本屋で見つけて早速買ってしまいました。
2007年に書かれた本でありながら、わざわざ1988年当時の医療の現状に基づいて書かれているというところが、まず面白い。現在のさまざまな医療問題のきざしが、既にこの当時に垣間見られた、ということを表現したかったらしい。
たとえば、「癌にかかったら死を宣告されたに近いような状況であった」とか、「癌は告知しないのが常識であった」とか書かれているんですが、鳥越さんが癌を克服したことをCMにするような現在の状況から振り返ると、確かにこの20年間で医療は大きく進歩したんだなあということを感じます。
昨日も、高校の先輩や同期と渋谷のベルギービールのバーに行って話しをしていましたが、ITなんてまだ生まれて10年にも満たないくらいの話で、世の中への影響は確かに大きいのかもしれないけれども、技術としての深みとか倫理的なところとか、まだまだ甘ちゃんな分野だなあと思うわけです。
話を本の話題に戻すと、舞台である東城大学医学部附属病院というところに、高階という新しい食道癌専門の先生が来るんですが、その先生のモットーは、『これまでの外科は、医者の神業的な技術に頼るところが大きかった。しかし、医療をシステムとして考えるのであれば、俗人に左右されるそのシステムはおかしい。その医者が、万が一倒れたりしたら、システムが崩壊するではないか。もっと外科は、あらゆる医者が失敗なく手術を完遂できる仕組みを考えるべきだ』ということで、スナイプなんちゃらという縫合器(詳しいことはよくわからないのですが、外科手術の場合、手術後に縫ったところが裂けるリークというのが失敗原因の一つとしてあるらしく、それを簡単にサポートする機械らしいです。。。ちなみに、スナイプというもの自体は、架空のもののよう。少なくとも検索には引っかかりませんでした。)を導入しようとします。
しかし、「神業」で食ってきた伝統的な教授たちは、自分たちの地位が脅かされるということで、反対をするんですね。あげくの果ては、手術のときに取り出した癌の病巣を見て、「これが自分たちにおまんまを食わせてくれていると思うと、かわいくも思えてくるよ」と口にする始末。
実際、その縫合器の「オモチャ」(頭の固い教授さんは、新しい機械のことをそう呼びます)を、高階先生以外が使うと、操作手順を間違って患者さんを危うく殺しかけそうになったり。。
このオモチャが一般化するためには、今日のような失敗をしたときにリカバーできる外科技術があることが前提だ。だが、オモチャが一般化した場合、外科医からそうした技術習得の機会を奪うことになる。この自家撞着をどうするつもりだ。
(この辺の話は、経費削減のためにあらゆる技術をアウトソーシングしようとするうちの会社とも共通点があり、全く他人事ではないのです。。。。)
でも、そういう凝り固まった外科教室を、新人である世良が切り崩していくのもまたよくて。
設定が1988年で、チーム・バチスタなど海堂さんの出されているシリーズと一貫しているので、速水先生の若いころのエピソードなどもチラッと書かれていたりして、そういう部分でも楽しめる本かと。
投稿者 zackie : 2007年09月23日 15:20
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